真理は単純にして平凡である。

心に残った一文を書き留めていきます。すこしずつ、ひとつずつ、ささやかに。

先生、ご臨終ですか。

山岡鉄舟は五十三歳で胃癌で亡くなったが、「胃がん胃がんと申せども いかん中にもよいとこもあり」と詠むなど最後まで洒脱さを失わなかった。

死の間際、枕頭を見舞った勝海舟が、「どうです。先生、ご臨終ですか」と問うと鉄舟は少し目を開いてにっこりと笑い、「さてさて、先生よくお出でくださった。ただいまが涅槃の境に進むところでござる」と苦もなく答えたという。

 

「体の知性を取り戻す」尹雄大 講談社現代新書 57ページ

 

こりゃすごい。死の淵にある畏友に向かって「ご臨終ですか」と声をかける海舟も海舟だし、それに平然と答える鉄舟も鉄舟。よほどの信頼関係がないとこうはいきません。

 

いま、こういうことはまずできません。

1、自宅で死ぬことはほぼできない

2、死期を自分でわかってもそのまま逝かせてくれない(特に親族が)

3、「ご臨終ですか」と声かけようものなら、周囲が黙っていない

 

おかしな世の中ですね。